虫の知らせ

・Web小説中公「銀婚式物語」第9回 を購入。
 自分も似た経験がある。
 当時、父はもう他界し母と自分で寝たきりの祖母の介護していた。(これはこれで大変だったのだが)
 いろいろあって、運良く空きのでた特別養護老人ホームにてお世話になる事ができた。
 ただ場所が遠く電車で1時間、最寄の駅からはタクシーで30分程奥まった所にあり、母も行くのに苦労していた。
 その頃、自分も仕事が無茶苦茶忙しく、土日出勤は当たり前、毎日終電か、徹夜みたいな悲惨な状況が長期に続いており
 (いわゆるデスマーチ状態のプロマネだった訳だが、よく鬱にもならず、脱走もせず、過労死もしなかったもんだ)
 なかなか手伝うことも出来なかった。
 で、何故か、今は全く思い出せないのだが、普通有り得ないのだが、ある日、会社を定時で帰る事が出来た。
 家でゆっくり休んでも良かったのだが、「車で送るから久しぶりにおばあちゃんに会いに行こう」と言うと、母も喜んで一緒に出かけた。
 かなりボケているのだが、孫は認識できるようで、「まぁ、大きくなって、学校は行ってるのかい?」と年齢はいささか混乱しているのは
 しょうがないかなと。小一時間ほど話をして、職員の方に挨拶して帰ったのだが、家に戻ったとたん、老人ホームから
 「容態が急変したので緊急で来て欲しい」と電話があった。車を車庫に入れるまもなく、すぐに向かったが
 もう、意識も無い状態であり、何とか最後を看取ることができた。
 普段忙しくてまともに家に帰らない自分が急に会いに行ったり出来たのはいったい何だったのだろうか。
 母も不思議がって、まるでお前が会いに来るのを待っていたみたいだね、などとしみじみ言っていた。
 忌引で3日休んで、出勤したときは地獄の向かってデスマーチは更に進行し酷いことになっていたのは言うまでもないけど。